
「ひとつのプレイ」平元文雄
毎回、練習には欠かさず来て、練習もコツコツ取り組むのですが、なかなかうまくならない子どもがいます。でも、私はそんな子が好きです。
この7月に菩提寺杯があります。この菩提寺杯でも参加していただく各チームから1名ずつ優秀選手を選びます。菩提寺杯では、昨年の大会から、その選考を応援してくれる中学1年生やOBの人にお願いしているのですが、たいがいの招待試合は参加チームの監督やコーチの方に1名選んでいただいて、大会の最後に発表して、記念のメダルを授与することが多いです。
相対評価をしますと、選ぶ選手はいつも決まった選手になることが多いです。そこで菩提寺SSSでは、一度優秀選手に選んでもらってメダルをもらった選手は選ばずに順番に回すようにしています。ただ、必ず、監督やコーチはどうしてこの子を優秀選手として選んだかは子どもたちに伝えています。
随分と前のことになりますが、いつもおとなしいプレイしかできなかった子どもが、試合中、相手選手と競り合いながら、体をはって、ヘディングし、味方選手に好パスを送ったことがありました。「○○ちゃん、すごい」と思うプレイでした。
そのワンプレイで私は優秀選手にその子を選びました。最後にチームメートに選考理由を伝えたら、ある子が、「あんなプレイでもらえるの」と言ったのです。その言葉はその子の本心だったのでしょう。
私は、そのとき、毅然として、「そうだよ、あのプレイでもらったんだ」と伝えました。
その子は確かにうまくはなかったけれど、練習にも一生懸命取り組む子どもでした。卒団するときの一言メッセージに、「僕がサッカーをしてきて一番うれしかったことはメダルをもらったことです」と書きました。
彼は中学校からはサッカーはしませんでしたが、きっとスポ少時代のよき思い出としてメダルは残っていることでしょう。
そして、彼の部屋には今でもそのメダルが大事に飾られていることでしょう。
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